Beginner's Guide
はじめてのSuchmos 入門ガイド
Suchmosは、ロックやジャズ、ヒップホップなどブラックミュージックの質感を、日本のポップスの真ん中で鳴らしたバンドです。このガイドでは、初めて聴く人が迷わないよう、最初の一曲から作品をたどる順路までを案内します。
Introduction
はじめに
Suchmos(サチモス)は、2013年1月に神奈川で結成されたバンドです。公式プロフィールによれば、ロックやジャズ、ヒップホップなどブラックミュージックにインスパイアされた音楽性を持ち、メンバーは全員が神奈川育ちです。バンド名はジャズの先駆者ルイ・アームストロングの愛称サッチモに由来し、自分たちも音楽的なパイオニアになりたいという意図が込められています。2015年のEP『Essence』でデビューし、2016年の「STAY TUNE」で広く知られるようになりました。2018年にはNHK紅白歌合戦にも出場しています。2021年2月に活動を一時休止し、同年10月にはベースのHSUが亡くなるという大きな別れを経験しましたが、2025年6月の横浜アリーナ公演で再始動しました。このガイドは、そんな長い歩みのなかから、初めて聴く人が無理なく入れる順番で作品を紹介するものです。作品ごとの詳細な解説ではなく、どの曲から聴き、次に何へ進めばよいかという道筋を示すことを目的にしています。
01
Suchmosとはどんなバンドか
まず押さえておきたいのは、Suchmosが特定のジャンルの枠に収まりにくいバンドだという点です。デビュー当時はディアンジェロやJ・ディラ、ジャミロクワイを好きなアーティストに挙げていたこともあり、ネオソウルやアシッドジャズの系譜で語られることが多くありました。一方で、音楽メディアの回顧記事では、爽やかなAORとルーズなヘヴィーロックが地続きで並ぶ作風に、規格外のミクスチャー感覚があらわれていたと評されています。ブラックミュージックのメロウさのなかに、ワイルドな色気が息づいている。そのおさまりの悪さが新鮮だった、という見方です。編成はボーカル、ギター、キーボード、DJ、ドラム、ベースの6人で、DJとキーボードが加わったことがバンドの可能性を広げたと、メンバー自身も語っています。入門者への提案としては、難しい前提知識を持たなくても、まず心地よいグルーヴとメロディに身をゆだねれば十分です。ルーツにあるジャズやソウルの知識は、聴き込んだあとに少しずつ効いてくる楽しみとして残しておけます。
聴くポイント
- — ブラックミュージック由来のグルーヴと、ポップに聴かせるメロディの両立
- — キーボードとDJが加える音の広がり
こんな人におすすめ
- — ジャンルの説明よりも先に、まず音の雰囲気を知りたい人
- — ネオソウルやアシッドジャズ的な質感に興味がある人
ネクストステップ
雰囲気がつかめたら、次の項目で紹介する最初の一曲「STAY TUNE」を聴いてみてください。
02
最初の一曲は「STAY TUNE」
最初の一曲としてすすめたいのは、EP『LOVE&VICE』のリード曲「STAY TUNE」です。この曲はJ-WAVEのTOKIO HOT 100で首位を獲得し、2016年9月にはHondaのVEZELのコマーシャルソングに起用されて大きな反響を呼びました。Billboard JAPAN Hot 100では最高10位を記録し、バンドにとって初めて主要な音楽チャートのトップ10に入った楽曲でもあります。入門の一曲に向いている理由は、タイアップを通じて耳にした人が多く、バンドの入り口として辿りやすいことにあります。これは編集上の提案ですが、曲単位で聴いたあとに、同じ4曲入りのEP『LOVE&VICE』を通して聴くと、デビューから1年ほどの時期のバンドの姿をコンパクトにつかめます。EPは長さも手ごろなので、初めての一枚としても負担が小さい構成です。
聴くポイント
- — J-WAVEのTOKIO HOT 100首位、VEZELのCM起用というヒットの経緯を知ったうえで聴く
- — 4曲入りのEP全体を通して聴き、バンドの最初の全体像をつかむ
こんな人におすすめ
- — まず代表曲から聴きたい人
- — CMや音楽番組でSuchmosを知った人
ネクストステップ
気に入ったら、同じ年のEP『MINT CONDITION』のリード曲「MINT」へ進んでください。
EP
LOVE&VICE
2016.01.27
作品を見る →配信・購入
03
最初のアルバムは『THE KIDS』
アルバムから入るなら、2017年1月発売の2作目のスタジオ・アルバム『THE KIDS』が入り口に向いています。オリコンとBillboard JAPANのアルバム・セールスの週間チャートで初登場2位を記録し、Billboard JAPANのアルバム・セールスでは2017年2月13日付で首位を獲得しました。全11曲で、リード曲「A.G.I.T.」のミュージックビデオが公開されています。バンドがEPと1stアルバムを経て、より広い聴き手に届くようになった時期の作品であり、代表曲の勢いとアルバムとしてのまとまりを同時に味わえます。もう少し軽く入りたい場合は、EP『LOVE&VICE』や『MINT CONDITION』から聴いても構いません。アルバムを通して聴く時間が取れる日には『THE KIDS』、通勤や隙間時間には4曲入りのEP、というように使い分けるのも一つの方法です。
聴くポイント
- — リード曲「A.G.I.T.」から入り、そのままアルバムを通して聴く
- — 11曲を通しで聴き、EP期の楽曲との違いを探す
こんな人におすすめ
- — アルバム単位でじっくり聴くのが好きな人
- — チャートで首位を獲得した代表作から入りたい人
ネクストステップ
『THE KIDS』のあとは、1stアルバム『THE BAY』でデビュー当初の質感に戻るか、『THE ANYMAL』で後年の変化を追ってください。
アルバム
THE KIDS
2017.01.25
作品を見る →配信・購入
04
この順番をすすめる理由
この順番をすすめるのは、まず耳なじみのある代表曲で入り口を作り、次にアルバムでバンドの広がりを確かめ、そのあと時間をさかのぼって原点を知るという流れが、初めての人にとって負担が小さいと考えるためです。これは編集上の提案であり、発売順に聴く方法も十分に成り立ちます。発売順なら、EP『Essence』と1stアルバム『THE BAY』から始めて、EP、アルバムと進むことになり、バンドが少しずつ大きな会場へ広がっていく過程をそのままたどれます。『Essence』は4曲入りのデビューEP、『THE BAY』は12曲入りの1stアルバムで、同作の頃にギターのTAIKING、DJのKaiki Ohara、キーボードのTAIHEIが加わって6人体制の土台が固まりました。逆に、時間が限られているなら『LOVE&VICE』と『THE KIDS』の2作だけでも、バンドの代表的な姿は十分に伝わります。どちらの順路でも、1作ずつ聴くたびに気に入った曲を一つ見つけておくと、次の作品を選ぶ手がかりになります。
聴くポイント
- — 代表曲、アルバム、原点という順に聴く流れ
- — 発売順にたどって、6人体制が固まる過程を追う聴き方
こんな人におすすめ
- — どの作品から聴くか迷っている人
- — 時間をかけて全体像を追いかけたい人
ネクストステップ
演奏や歌の細かな聴きどころを知りたい人は、次の項目へ進んでください。
05
聴きどころはグルーヴと歌声
Suchmosの曲づくりは、スタジオでのジャム・セッションが軸だと伝えられています。お題を決め、リフが出てきたらそれを手がかりに、メンバーが意見を出し合って形にしていく進め方です。とくにDJのKaiki OharaとキーボードのTAIHEIが、曲の輪郭を決める役割を大きく担っていると、メンバー自身が語っています。作詞は主にYONCEとHSUが担当し、YONCEは日本語の歌詞では美しい言葉の響きを意識していると話しています。また、松任谷由実はYONCEの歌声について、ハイトーンなのに膨らみがあると評しています。こうした話を踏まえると、演奏が重なったときの気持ちよさ、鍵盤やターンテーブルが加える空気感、そして歌の伸びやかさが、聴きどころとして浮かびます。初めて聴くときは、歌だけでなく、ベースとドラムがつくる土台の上で鍵盤とDJがどんな色を足しているかにも耳を向けてみてください。
聴くポイント
- — ベースとドラムの土台に、鍵盤とDJがどう色を足しているか
- — YONCEの歌声の伸びと、日本語と英語のバランス
こんな人におすすめ
- — 演奏や音作りにも耳を向けて聴きたい人
- — バンドサウンドの中の鍵盤やDJの役割に関心がある人
ネクストステップ
聴きどころがつかめたら、次の項目で作品ごとの進み方を確認してください。
06
次に聴く作品への道筋
『THE KIDS』や『LOVE&VICE』で気に入った点が見つかったら、次は時期ごとに広げていきます。2016年7月のEP『MINT CONDITION』のリード曲「MINT」は、リーバイスとのコラボレーションで制作されたミュージックビデオが、MTV Video Music Awards Japanの最優秀邦楽新人アーティストビデオ賞を受賞しています。2017年発売のシングル『FIRST CHOICE LAST STANCE』は、自主レーベルF.C.L.S.の第1弾作品で、「WIPER」と「OVERSTAND」の2曲を収録しています。2018年2月には配信シングル「808」がHondaのVEZELのCMソングとして起用され、同年のNHKサッカー中継のテーマには「VOLT-AGE」が選ばれました。同じ2018年6月には7曲入りの『THE ASHTRAY』も発表されており、初のホールツアーから紅白歌合戦初出場へ向かう時期の作品として聴けます。2019年1月にはJ-WAVE開局30周年記念ソングとして「WATER」が配信され、続く3作目のアルバム『THE ANYMAL』はBillboard JAPANのアルバム・セールスで最高3位を記録しました。ここまで聴くと、EP期から大きな会場を見据えた時期までの変化がひととおりつかめます。
聴くポイント
- — 「MINT」のミュージックビデオと楽曲の関係
- — 2017年から2019年にかけて、タイアップや記念曲を通じて広がっていく活動の幅
こんな人におすすめ
- — 代表曲のあとに、シングルやタイアップ曲を追いたい人
- — バンドが大きな会場へ広がる時期の作品を聴きたい人
ネクストステップ
活動休止と再始動の流れを踏まえて、次の項目で現在のSuchmosを確認してください。
07
再始動後の現在と、魅力の結論
Suchmosは2021年2月に活動を一時休止し、同年10月には初期メンバーのベーシストHSUが亡くなりました。その後、2024年10月に再始動を発表し、2025年6月の横浜アリーナ2DAYSで復活しています。ライブレポートでは、この日の横浜アリーナが、休止期間中もそれぞれがバンドの一員であり続けたことを感じさせる場だったと伝えられました。再始動後の2025年7月にはEP『Sunburst』が発表されました。サポートベーシストとして参加していた山本連は同作の全楽曲のレコーディングに関わり、2026年2月に正式加入しています。魅力をまとめると、ブラックミュージックへの敬意と、日本のポップスとして届く聴きやすさが同じ曲のなかで両立している点です。そこにキーボードとDJを含む6人の重なりと、伸びのある歌声が加わります。過去の代表作から現在のEPまで、時間をかけて聴き継ぐほど、バンドの長い物語が見えてくるはずです。
聴くポイント
- — 再始動後の作品として、初期作品と聴き比べる
- — 2019年9月8日の横浜スタジアム公演を収めたライブ作品で、バンドの当時の姿に触れる
こんな人におすすめ
- — 現在のSuchmosを知りたい人
- — 過去作を聴いたあとに、再始動の意味を感じたい人
ネクストステップ
気になった時期の作品へ戻り、聴き比べながら自分なりの一枚を見つけてください。
Choose Your Route
あなたの好みから選ぶ
まず代表曲から気軽に聴きたい
タイアップやチャートで知られる曲から入り、EP単位で聴き進める道筋です。

LOVE&VICE
リード曲「STAY TUNE」を含む4曲入りEP。J-WAVEのTOKIO HOT 100首位やVEZELのCM起用で知られ、最初の入り口に向きます。

MINT CONDITION
リード曲「MINT」のミュージックビデオがMTV VMAJの最優秀邦楽新人アーティストビデオ賞を受賞。映像とあわせて楽しめます。

808
HondaのVEZELのCMソングとして起用された配信シングル。CMで曲を知った人が入りやすい一作です。
アルバムを通してじっくり聴きたい
アルバム単位でバンドの広がりを確かめる道筋です。

THE KIDS
Billboard JAPANのアルバム・セールスで首位を獲得した2作目のアルバム。11曲で代表曲の勢いとアルバムの流れを味わえます。

THE ANYMAL
3作目のアルバムで、Billboard JAPANのアルバム・セールスで最高3位。アリーナツアーへ向かう時期の作品として聴けます。
デビュー当初のネオソウル的な質感を知りたい
原点のEPと1stアルバムを通して、初期のバンドの姿に触れる道筋です。

Essence
2015年4月のデビューEP。当時はネオソウルやアシッドジャズの系譜で語られることが多く、原点を知るのに向きます。

THE BAY
12曲入りの1stアルバム。リード曲「YMM」はJ-WAVEのTOKIO HOT 100で最高2位を記録し、6人体制の土台が固まった作品です。
再始動後の現在のSuchmosを聴きたい
活動休止を経た現在のバンドと、かつての勢いのあるライブに触れる道筋です。

Sunburst
再始動後の2025年7月に発表された4曲入りEP。山本連が全楽曲のレコーディングに参加しています。

Suchmos THE LIVE YOKOHAMA STADIUM 2019.09.08
2019年9月8日の横浜スタジアム公演を収めたライブ作品。活動休止前のバンドの姿を知る手がかりになります。
Career Flow
キャリアの流れ
Suchmosの歩みは、結成とデビュー、ブレイク、大きな会場への広がり、活動休止、再始動という流れで整理できます。
2013年〜2015年 結成とデビュー
2013年1月に結成し、2014年にFUJI ROCK FESTIVALのROOKIE A GO-GOに出演。2015年4月にEP『Essence』でデビューし、同年7月に1stアルバム『THE BAY』を発表しました。この頃にTAIKING、Kaiki Ohara、TAIHEIが加わって6人体制の土台が固まり、同年12月にはApple Music Best of 2015のベストニューアーティストに選ばれています。
Essence
THE BAY
2016年〜2017年 ブレイクとレーベル発足
2016年のEP『LOVE&VICE』の「STAY TUNE」がJ-WAVEのTOKIO HOT 100で首位を獲得し、VEZELのCM起用で広く知られました。同年のEP『MINT CONDITION』、2017年1月のアルバム『THE KIDS』と続き、『THE KIDS』はBillboard JAPANのアルバム・セールスで首位を獲得。2017年4月には自主レーベルF.C.L.S.を発足させ、第1弾として『FIRST CHOICE LAST STANCE』を発表しました。
LOVE&VICE
MINT CONDITION
THE KIDS
FIRST CHOICE LAST STANCE
2018年〜2019年 大きな会場への広がり
2018年2月に「808」が再びVEZELのCMソングに起用され、同年に7曲入りの『THE ASHTRAY』を発表。NHKサッカー中継のテーマに「VOLT-AGE」が選ばれ、12月にはNHK紅白歌合戦に初出場しました。2019年1月にJ-WAVE開局30周年記念ソング「WATER」を配信し、3月に3作目のアルバム『THE ANYMAL』を発表、アリーナツアーを開催しています。
808
THE ASHTRAY
WATER
THE ANYMAL
2020年〜2024年 ライブ作品と活動休止
2020年1月に2019年9月の横浜スタジアム公演を収めたライブ作品が発表されました。2021年2月に修行の時期を迎えるためとして活動を一時休止し、同年10月にはHSUが亡くなりました。休止期間中、メンバーはそれぞれソロや別バンドなどで活動を続け、2024年10月に再始動が発表されています。
Suchmos THE LIVE YOKOHAMA STADIUM 2019.09.08
2025年〜 再始動
2025年6月に横浜アリーナ2DAYSで約5年半ぶりのライブを行って再始動し、7月にEP『Sunburst』を発表しました。2026年2月にサポートベーシストの山本連が正式加入し、公式サイトでは2026年5月から国内9都市18公演の対バンツアー『The Blow Your Mind TOUR 2026』が案内されています。
Sunburst
Conclusion
次の一曲へ
Suchmosは、ブラックミュージックへの敬意と、日本のポップスとして届く聴きやすさを両立させてきたバンドです。まずは「STAY TUNE」やEP『LOVE&VICE』で入り口を作り、『THE KIDS』でアルバムの広がりを確かめ、気になる時期の作品へ進んでみてください。活動休止を経て再始動した現在のSuchmosを、過去の作品と聴き比べながら追っていくことも、このバンドならではの楽しみです。
参考情報
- Suchmos(サチモス) BIOGRAPHY — Suchmos 公式サイト
- Suchmosの再始動発表を受けて振り返る、バンドが歩んだ道程から後進への影響まで | Mikiki by TOWER RECORDS — Mikiki(タワーレコード) (2024-11-28)
- Suchmos - Wikipedia — Wikipedia
- Suchmos、5年半ぶりの復活ライブレポート「こんなに大事な人たちを待たせてた」 | NiEW(ニュー) — NiEW (2025-06-22)
- Suchmos、活動休止を発表 - News - OTOTOY — OTOTOY